飯塚市議会議員「えぐち徹」のつれづれ日記

飯塚市議会議員えぐち徹の足跡です。

庁舎建設関係補正予算に反対する。〜反対討論〜

昨日まで行われていた9月議会に庁舎建設関係の補正予算が提出されていました。
これは、飯塚市役所の建て替えを今年度から行うという予算です。
延床面積は約18000平米、費用は総事業費97億2784万7千円、利子込みの総支払額は129億4063万5千円にも上ります。
私は、この計画に対し以前から反対。今日も同じく反対しました。
その採決にあたり討論を行いましたので、その討論の原稿を紹介します。

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議案第83号飯塚市一般会計補正予算(第4号)に反対の立場から討論をいたします。

この議案は、ここ飯塚市役所の建て替えを今年度から行うという予算であります。
規模は、約18000平方メートル、費用は総事業費97億2784万7千円、利子込みの総支払額は129億4063万5千円にも上ります。


まず、この市役所の建て替え自体に対する私の考えを先に述べさせて頂きます。
庁舎の建て替え自体に対しては、私は反対ではありません。昭和39年4月生まれのこの市役所、41年1月生まれ48歳の私より年上の50歳です。
建物としては、そろそろ現役世代ではなくなってきており、カラダにがたがきてまるのはその通りでしょう。老朽化はしてきており、耐震改修でも多額のお金がかかる。合併特例債という有利な制度があるうちに、その制度を利用して建て替えようという事に関しては、それもありだと考えています。


簡単に言うと、建て替えも必要でしょう。でも、現在の建て替えの計画はまずい、建て替えるにしても、計画を見直し、今後の市役所の仕事に仕方にあったもう少し小さく費用もかからないものにすべきだと考えているのです。
私は、こういった考えであると言うことを頭の片隅において頂いて、以降の討論を聴いて頂きたいと思います。


平成24年、市は、5月に、建て替えの方向性などをまとめた本庁舎整備方針を策定し、それを踏まえて、8月に新庁舎建設基本計画(案)を策定しました。現地建て替えで、平成29年度完成、17800平方メートル、80億円という計画です。(参考 http://www.city.iizuka.lg.jp/06machi/tyou_mon/kihon_keikaku/index.php
同じく、平成24年9月20日の本会議一般質問で、私はこの庁舎の建て替えについて、「戦艦大和」になぞらえ、「規模も大きく、値段も高く、そして何より時代遅れ」と批判し、計画を見直すべきだと主張しました。
もちろん、この戦艦大和というのはあくまでも「比喩」、「ものの例え」であり、戦艦大和を造った方々、載っていた方々に対して、非難するものではありません。巨額な金額とその当時の日本の技術の粋をこめて造ったものでも、時代に合わないと、悲惨な結果になると言うことに焦点を当てさせて頂いています。
なぜそのように主張したのか、改めて紹介させて頂きます。


まず、規模についてです。
現在の市役所本庁の規模は13166平方メートル、この中に620人の嘱託や臨時の方を含め職員が仕事をされています。この市役所が18000平方メートルの新庁舎に建て替わります。規模で言うと、約37%増えます。しかし、計画では、新庁舎に入る職員の方は、601人と減ります。職員が3%減るのに規模は37%増える。また他の庁舎はどうかというと、穂波庁舎、9325平方メートルで176人、本庁の71%の規模の庁舎に、本庁の28%の職員がおられます。筑穂庁舎は、5764平方メートルに25人、44%の規模の庁舎に4%の職員、庄内庁舎は、441平方メートルで27人ですので、3%の庁舎に4%の職員、頴田庁舎は、3061平方メートルで26人ですので、23%の庁舎に4%の職員となります。
このような数字を紹介するまでもなく皆さんご存じのように、穂波、筑穂の庁舎は双方とも平成生まれで働き盛り、広くて職員も少ない。空きスペースがあるのです。今ある施設を上手く使うことを考えるのが必要であり、それが行政に期待されているのではないでしょうか。
少子高齢化で人口も減るばかり、今後も行革していって市役所で働く方々の人数はさらに減るでしょう。でも本庁の面積は、4割増、これが戦艦大和と呼んだ理由の一つです。「規模が大きい」、「でかい」と言うことです。


次に費用についてです。
建設費の高騰等が騒がれており、この新庁舎の計画もその渦の中にありますが、当初の計画でも本体建設費は、約61億円、坪単価は113万円です。
対して、飯塚と同じように合併して庁舎を建て替えた諫早市役所、広さは18500平方メートルですので、飯塚の計画よりちょっと広いだけ。ここの本体建設費は、42億円ですので、坪単価は75万円です。
また、すぐそばにある麻生飯塚病院、北棟が昨年春に完成しました。広さは、17400平方メートルとちょっと狭いだけ。ここは総事業費ですが45億円。坪単価に直すと85万円です。
続いて市立病院、本館の工事がかなり進んでいますが、こちらは13740平方メートルで、約36億円、坪単価では、87万円です。
つまり、建設費高騰のまえの当初計画においても、費用は高いのです。


そして、最後の時代遅れについてです。
今回の庁舎建設計画は、現状の業務体制を基本に計画されており、支所との役割分担については見直しがなされていません。
今後の市役所の仕事の仕方、未来の仕事のスタイルにあった庁舎が必要なんです。
これから先、更に高齢化は進みます。車を運転して好きな時間に好きなところに行ける方が増えます。
そのような方々を含め、飯塚市民に対し、今後、市役所はどのようにサービスを提供するのか。
どこで、どのように、そのサービスのあり方を全面的に見直した上で庁舎の規模、施設等の絵を描くべきではないでしょうか。
商売のあり方も大きく変わりました。
コンビニも、様々な変化を遂げ、大きく伸びています。
24時間いつでも日用品を買えて便利だったのが、更に進化。徹底した商品管理システムと高度な物流、ITによって、日本の文化を大きく変えました。
更には、激減する役場、交番、金融機関に代わり、防災、納税、公共サービス取扱など、いまや「公共」機能も担いつつあります。
このように、お客様目線で考え、どんどん形を変えながら進化していったところが、評価されるのです。
市役所は、独占企業だから競争にさらされないかと思う方もおられるでしょうが、そうではありません。市役所も、他の自治体との競争にさらされています。
そういう意味で、これからの飯塚市民に合わせた仕事の仕方を考え、それにあった市役所本庁、その他のサービス拠点を整備していかなくてはならないと思っています。
更に述べると、市役所もコンビニ同様、地域に出て行くべきだと考えています。具体的には、歩いて行ける範囲に、小さなサービス拠点を作る。そして、そのサービス拠点でコンビニ同様、ほとんどのサービス・手続ができるようにする。昔はそんなことは出来ませんでしたが、今はITの力を借りると出来ます。なにか難しいことが出てきたらパソコンの画面を本庁の担当部署につないで、テレビ会議で話を進めれば良いんです。そんなサービス拠点。学校に併設するのが理想と思いますが、こんな地域に密着したサービス拠点が中心の市役所であれば、合併して本庁が遠くなったと言われずに済みます。
本庁はその後方支援の役割を果たす。また、他方で電話で買い物が出来たり、銀行の手続が済ませられるように、市役所の仕事も電話で済ませられる仕組みを作る。
そんな市役所がこれからの市役所ではないでしょうか。
しかし、現状の業務体制を基本に計画されており、支所との役割分担については見直しがなされていません。
これが戦艦大和と言った第三の理由「時代遅れ」と言うことです。


以上3点にわたって、戦艦大和になぞらえ、当初の庁舎の計画について疑問を述べてきました。
この庁舎の計画が、現在の建設費の高騰を受け、金額面で更に膨らんでいます。その額、総事業費で97億2784万7千円、利子込みの総支払額は129億4063万5千円にも上ります。


市は、この建設費の高騰の理由を、復興需要、公共事業の増加、東京オリンピックなどによるものであり当分続く、上がりこそすれ、下がることはないと判断し、予定通り今年度中に着工したいと言われています。


しかし、財源である合併特例債の期限から考えると数年先送りすることが出来ます。本当に今しかないのでしょうか。
バブル期以降、公共事業悪玉論の中、公共事業が大きく減ってきて、民間需要も冷え込み、建設業界が縮小、職人さんをはじめとする就業人口も大きく減りました。需要と供給で言うと、需要も供給も減ったのです。
そのような時代の中、建設単価も低迷を続けます。これが、東日本大震災が起き、復興需要が大きく伸びる。ここで需要と供給のバランスが一気に崩れます。更には、民主党政権から自民党政権となり、国土強靱化・アベノミクスなどの政策の元に公共事業も大きく伸びる。更には民間投資も上向きます。需給バランスは更に悪化。そんな中、東京オリンピックが決定、ここでは公共事業だけでなく民間投資も見込め、建設費の高騰は続いているというのが現状でしょう。


その影響は大きく、民間の投資案件がこの建設費の高騰により採算性が悪化し、先送りとなっている事例が多くあります。
JR函館駅前で計画が進んでいた2つのプロジェクトが相次いで白紙に戻ったり、川崎市の向ケ丘遊園跡地で進めていた住宅開発計画も「事業として成立しない」と判断、白紙だそうです。(参考 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2701E_X20C14A6000000/?df=2


行政でも、同じような動きはあり、先の特別委員会でも紹介しましたが、千葉県木更津市、東京都豊島区などは古くなった公共施設の建て替えなどを五輪後に延期します。
 木更津市は、庁舎建て替えの入札を4月に予定していましたが、事業者が見込む事業費が市の予定価格を大きく上回り、事業者が参加を辞退。市は入札を取りやめました。そして、(1)計画通り建設(2)規模を縮小して建設(3)五輪後に先延ばしして建設――の3つの案で費用を改めて試算。総事業費が131億円と最も安くすむ先延ばし案を採用したとそうです。
東京都豊島区も大型複合施設の建設計画を20年前後まで凍結する方針を決めています。
復興需要・国土強靱化による公共事業の増大は、政府も急いでおり、これから先も大きな投資が続くとは思えません。(参考 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB27004_X20C14A5MM0000/


他方、飯塚市の財政見通しによると、道路や市営住宅など通常の公共事業は、毎年24億円が見込まれていますが、学校関係の投資や浸水対策、中心市街地活性化、新庁舎建設などを中心とする特別事業では、今年度平成26年の184.8億円をピークにして以降大きく減少します。合併特例債の最後の3年だと、借金の利払いである公債費を除いた事業費は平成30年度が48億7千万円、平成31年度が11億2千万円、平成32年度が4億2千万円の合計64億1千万円と、平成25年度から平成27年度の387億円と比較して、1/6に激減します。(参考 http://www.city.iizuka.lg.jp/06machi/gyozaisei/iinkai/h24/h2402_s06.pdf


先日議会に出された陳情の中にも次のような記載があります。「近年、各学校大規模改修、給食棟新設、飯塚市立病院新設等、多くの物件が発注され、今年度後期も給食棟新設をはじめ、さらに穂波小中一貫校、菰田保育園、市立病院既設棟改修、幸袋小中一貫校、新庁舎が発注予定と聞き及んでおります。〜中略〜来年度以降も公共工事におきましては発注予定があるのではと拝察いたしますが、数に限りのある市内業者でございますので、状況によっては、市内業者で入札が成立せずに、市外業者の選考が必要になる事態が発生するのではと危惧いたしております」とあります。
このように、現在は市内業者だけで大丈夫か心配になるくらい発注が多い反面、数年経つと飯塚市発注の公共事業は大きく減る見込みがあるのです。


業者の方々にとっても、このような需要の急増、急減はマイナスです。現在のような資材費や労務費の高止まりの中では、受注しても、採算割れということすら起きかねない、充分な利益も見込めません。他方、発注者側の市にとっても、費用が高く良いことはありません。そして、今年のピーク以降、公共事業が急減したら、業者の方々は仕事が少なく、奪い合い、叩き合いに戻ってしまうこともあるでしょう。できるだけピークを作らず、発注することは業者の育成のためにも必要だと考えます。
このような市の発注の波、復興需要、国土強靱化の波を考えると、現在が建設費のピークではないでしょうか。
行政の仕事は、最小のコストで最大の効果をというものです。


建てるなとは言っておりません。建てるなら未来を見据えて建てよう。そして建設費のピークと思われる現在ではなくもう少し先送りしようということです。特例債を考えても、数年の先送りが可能です。数年間先送りする間に、未来への議論をやり直す時間も出来ます。
そのことを改めて申し述べて、私の討論とさせて頂きます。
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以上、反対討論の原稿でした。最後までお読み頂きありがとうございました。

この補正予算に関しては、私を含め4人が反対の立場で討論、賛成討論はありませんでした。
しかし採決の結果は賛成多数で可決。これで新庁舎の建設が大きく動き始めます。
当然予想された結果ですが、残念です。