飯塚市議会議員「えぐち徹」のつれづれ日記

飯塚市議会議員えぐち徹の足跡です。

資産公開に関する反対討論。

昨日の本会議の様子が、既にYouTubeにアップされています。
その中には、今回の議会で大きな注目を集めた「飯塚市長の資産等の公開に関する条例の一部を改正する条例」に関する委員長報告、討論、採決の様子も。ぜひ、その様子をご覧下さい。

資産公開に関する委員長報告 https://youtu.be/xlo1J1LQRsA?t=2m50s
川上議員の賛成討論     https://youtu.be/xlo1J1LQRsA?t=7m35s
城丸議員の反対討論     https://youtu.be/xlo1J1LQRsA?t=15m20s
光根議員の賛成討論     https://youtu.be/xlo1J1LQRsA?t=19m55s
私・江口徹の反対討論    https://youtu.be/xlo1J1LQRsA?t=22m00s

また、私の反対討論については、以下の通りです。ご一読頂き、資産公開について考える機会になれば幸いです。
反対討論の中で紹介している斎藤文男さんの著書「政治倫理条例のすべて」はコチラ

おはようございます。議案第54号 飯塚市長の資産等の公開に関する条例の一部を改正する条例に対し、市長提案の原案、並びに勝田委員提案の修正案、その双方に反対の立場から討論を致します。
市長提案の原案は、その提案理由にあるように資産公開対象者を市長のみから副市長、教育長、企業管理者へ拡げるものであります。
また民進党勝田委員の修正案は、その対象者を議員に拡げるものであります。

条例案双方に対する反対の理由として3点あげます。
まず、第一に、この資産公開制度そのものが持つ問題点についてであります。
次に、その審議過程についてであります。
最後に、政治姿勢についてであります。

以上3点の反対理由について以降、述べます。
まず第一の、この資産公開制度そのものが持つ問題点についてであります。
ご承知のように、この資産公開制度は、昭和58年兵庫県堺市で政治倫理条例として誕生します。
誕生したきっかけは収賄事件で有罪判決が確定した市議が辞めずに居座ったことから始まります。
このようなことが二度とないようにと、市議や市民が学者の協力を得て、政治倫理条例を定めました。その中で、資産公開制度は、アメリカでウォーターゲート事件の反省から生まれた政府倫理法(1978年)に学んで定められました。
改正前の政治倫理条例の資産公開制度では、首長や議員に毎年1月1日時点の資産等を報告させ、それを公表すること、また報告書について疑問がないか、審査会で審議することとなっていました。
審査の際に、資産報告書に疑義があるときは、報告義務者からの事情聴取等必要な調査を行うことができることとなっており、なんでこの議員の資産は今年こんなに増えているの?会社からの給与や議員報酬では説明つかないよね。といったような不自然な資産の増加があれば汚職の疑い、そして調査となるわけです。

しかし、一見うまく機能しそうに見える制度ですが、実際はそうではありません。
資産公開法同様、タンス預金は報告義務はありませんし、例えば3つの通帳があっても2つ分しか資産報告書に載せなくても実際は分かりません。
当然、市長や議員が、業者から「今度のどこどこの工事はウチの会社に」とお金や宝飾品などをもらっても、資産報告書に載せるはずもありません。
この点を捉え、私は、ザル法とよびました。それに対して、「ザル法というなら制度を強化すべき」と批判を頂きました。しかし、市の条例で設置する審査会に、検察のような強い調査権限を持たせることも出来ませんし、市外にある金融機関にだれだれ議員の預金はいくらあるか答えなさいと強制することも出来ません。
配偶者や同居の親族まで資産報告をさせろという方もおられますが、息子や娘のプライバシーを犠牲にしても、不正発見に有効な制度とはなりません。
市の条例の限界です。不正の発見は警察・検察の仕事なのです。

議員の資産公開制度が、政令市を除く793市のうち、42市だけしかないのは、この制度の持つ限界からだと考えています。

また、飯塚だけでなく、他の自治体を含め、この資産公開制度で実際に不正な働きかけを見つけた、不正なお金が報告されたという事例を私たちや市側も知らないだけでなく、旧庄内町や川崎町の事件のように、制度があったのに不正が発見できなかった、つまり有効でないことが証明された事例さえあります。
私が、資産公開制度が、不正防止・不正発見に役立たない、実効性がないというのは以上の理由からです。

そして、この資産公開制度が政治家の不正防止・不正発見に役立たない、実効性がないという点については、市長も理解されているはずです。
この点については、3月議会の私の「資産公開によって不正が発覚した事実は、私どもも執行部も知らない。資産公開制度が必要というには、資産公開制度が有効だという前提があって初めて成り立つと思うがどうか。」という質問に対し「本当に効果があるのかと問われると、そのことだけで効果があるものだろうとは、正直私も考えておりません。」と市長はお答えになりました。また6月19日の議会運営委員会における、市長の「資産公開制度だけで不正を未然に防ぐといったことにはならないかもしれない。」といった発言から明らかです。
また、今回修正案を提案された勝田議員の所属する民進党についても、一昨年12月の条例改正時には賛成しておられますし、今回の審議にあたり、資産公開制度が有効であるとわかったという発言は一切ありません。

このように実効性のない制度を制度として採用すべきでありません。

次に、その審議過程についてであります。
一昨年12月の政治倫理条例改正にあたり、私たち市議会が非常に多くの批判を受けた点の一つとして、審議が早すぎるという点がありました。委員会付託を省略した上で、わずか2時間半程度での審議による拙速な議論で資産公開制度が廃止された。これは暴挙であると言われました。
しかし、今回の委員会審議はおよそ45分であります。市長提案の原案だけでなく修正案も含めて、45分の審議にとどまります。それも、以前市民団体が求めた請願とも、政治倫理審査会が求めていた資産公開とは大きく違う内容であるのに、その議論は尽くされていない。そう考えます。

最後に、政治姿勢であります。
市長は、6月19日の議会運営委員会で「私と一緒に仕事をする特別職も私と同様な思いで職務に当たってほしいとの願いから」資産報告をすることとしたと述べられました。
そのことと、条例改正は別問題であります。市長が副市長・教育長・企業管理者に市長と同じ思いで職務に当たって欲しいと思って資産報告が必要だと考えたのなら、条例改正することなく、自主的に公開すればすみます。条例改正を行うと言うことは、ご自分の政治姿勢だけの問題ではなく、将来にわたって飯塚市として必要だと考えると言うことであります。
この点に関し、検討不足であると言わざるを得ません。

また、市長は、3月議会での「私たちの行った政治倫理条例の改正をどう理解しているのか」という私の質問に対し、「どうあるべきかということをみずからに問いただす意味でも、自分なりに一生懸命に話の内容を伺っていたつもりだ。現在の資産公開を中心とした政治倫理条例のあり方では、あまりにも抜け道が多いので、資産公開は廃止する。しかしながら、政治倫理規範については、より重視するということでやり取りがあっていたように、私は記憶しております。」と言われ、続けて「市民の皆さんに襟を正した私、そして議会も含めた、市としてのありようを、どうお示しするべきか、議会の皆さんとも今後、一緒に考えていきたいと思っているところでございます。」と答えられました。
「議会の皆さんとも今後、一緒に考えていきたい」と3月議会の私の質問にしっかり答えられている訳であります。
しかし、今回の条例提案まで、市長から私たちに、議会に対し、「この問題についてやっぱり私はこう思う。こういうことではどうだろうと、一緒に考えて欲しい」と投げかけはあっていません。

また、今回の資産公開については、先に述べたように市民団体が請願で求めていたものとも、政治倫理審査会がもとめていたものとも違います。今回の提案が、内容の薄い、ゆるい条例であることは、提案された市長も、修正案を提案された勝田委員を含め、総務委員の皆さんが理解されている所です。
今回の提案は、国の資産公開法と同様の資産公開をしようというものであり、斎藤文男氏の著書「政治倫理条例のすべて」この本には、この資産公開法に関し、次のように書かれています。
「現行法の資産公開は、嘘でもなんでも資産報告書を出しさえすればよく、これをチェックする機関がありません」、「資産公開法自体がザル法で、これに右に倣えした資産公開条例も同様の批判を免れません。なぜなら、政令市を除く市町村では議員に適用がないうえに、?報告は本人名義の資産に限られ、家族名義の資産隠しは野放し、?報告事項の目が粗く、抜け穴だらけで、?証明書の添付も不要、?報告書をチェックする機関もなく、?報告書の不提出や虚偽記載に対する罰則もないために、信憑性(真実性、信頼性)に乏しい資産報告書の出しっ放しに終わっているからです。こんな形だけの資産公開では、政治腐敗の防止はとうてい期待できません」資産公開法はこのように酷評されており、ザル法ザル法と言われるのは、国会議員の資産公開の際の報道にもよく見受けられます。このように、今回の提案は、以前の政治倫理条例の資産報告から一歩も二歩も三歩も下がったものであります。

市長は、「これは第一歩だ。」と言われています。しかし、条例を提案する際に、第一歩では困るんです。制度をしっかり見据えた上で,考え抜いて、提案の時点でこれがベストだというものを出すべきです。

以上、この資産公開制度そのものが持つ問題点、そして審議過程、最後に中途半端な提案であるという事に加え、先ほど述べた議会の皆さんとも今後、一緒に考えていきたいと言われたことなどがなされていないことなどが政治姿勢として賛成できない理由です。

中途半端が一番悪い。もし、市民の不信感、不安感を払拭するために資産公開が必要だと考えるなら、市民団体や政治倫理審査会の求めたような資産公開制度とすべきです。

しかし、そんな制度にしても、ザル法ザル法のままです。

斎藤文男氏の「政治倫理条例のすべて」こちらには、たんす預金について次のようにあります。「生活や商売に必要な現金を手元に置くことは蓄財に当たりません。」、「かりに蓄財を現金のまま持っていたとしても、審査会には警察のような強制調査権はなく、確かめる術がありません。だいいち、資産隠しのたんす預金を報告する人はいないでしょう。だから、たとえ規定を設けても実効性を欠かざるをえません。大半の条例の資産報告に「現金」の項目がないのはそのためです」そう書かれています。

審査会で審査しても、報告が真実かどうか確かめるための強制調査権はないのです。そして、この資産公開制度が1983年に堺市で始まってから30年を超えていますが、今まで資産公開制度で不正が発見された事例はありません。反対に妻子条項まで定めた厳しい条例があっても不正が行われていたという無力だったという事例は複数あります。そのような状況がわかっていながら、この制度を続けるべきでしょうか。

資産は、大切にすべきプライバシーです。もし、そのプライバシーを犠牲にするなら、それは明確な理由がなくてはいけません。その他の手段で解決できるのであれば、その他の手段で解決しなくてはなりません。それだけ大切なものだと私は考えています。

私は、そんな議員にならない。議員は公職だから、自分で望んでなったんだからとも言われます。でも、あなたの娘さん、息子さんが議員になることもあるかもしれません。同居の親族だからお母さん、お父さん、資産公開してと言われて、喜んで公開されますでしょうか?ぜひ、他人事ではなく、自分の事として、資産公開を、そして政治倫理を考えて頂きたいと強く思います。

この機会に、資産公開で市民の不信感、不安感を払拭できるという幻想を捨てて頂きたい。市民の皆様、報道機関の皆様も資産公開で政治家を監視できるという幻想を捨てて頂きたい。お金の動きで、不正をチェックするのは、警察・検察に任せましょう。

しかし、市民の不信感・不安感は少しでも解消しなくてはなりません。不正防止の仕組み作りは更に検討が必要です。

昨年末に市長・副市長の賭けマージャンという衝撃の事件があり、市民に大きな不信感・不安感を与えてしまいました。この事件に対し、私たち議会は政治倫理審査会でしっかり審査すべきと考えていましたが、審査会の立ち上げまで時間がかかったことや、充分な審査が出来たかどうか、そういった点も含めて反省すべき点も見えてきました。
また、現在、先の一般質問で指摘されたように特別職を含む倫理条例違反の疑いがあり、調査中の案件もあります。

このようなことが二度とないよう、市長を含め執行部も、私たち議会も、そして市民もしっかり考えなくてはなりません。私は、資産公開とは別な方法で、不正防止・発見の仕組み作りを、具体的には政治倫理条例の改正を目指します。一昨年の政治倫理条例改正の際に指摘された点を含め、全般にわたって見直しを行い、更に厳しい条例制定を目指します。

そのことをお約束し、以上をもちまして、議案第54号 飯塚市長の資産等の公開に関する条例の一部を改正する条例に関し、市長提案の原案、並びに勝田議員提案の修正案、その双方に反対の立場での討論と致します。