飯塚市議会議員「えぐち徹」のつれづれ日記

飯塚市議会議員えぐち徹の足跡です。

「通信簿に議員戦慄!?」「しつこいぞ片山!」「嵐を呼ぶ元役場職員 林川しんちゃんも登場!」〜鷹栖町議会視察報告〜


「なにこれ?」と思われた方も多いだろう。
これ、れっきとした議会が出したチラシに踊っている言葉だ。

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鷹栖町議会中吊り広告風チラシ 2019年9月定例会

 

この中吊り広告のような議会のお知らせを作ったのは北海道の鷹栖町議会。
そんな鷹栖町議会へ今週月曜4月12日に視察に行った。
といっても、この時期、北海道に行ったわけではない。
そう、オンライン視察なのだ。

 

今回の視察を仕掛けられたのは、兵庫県西脇市議会の林晴信議員。
林議員とはじめてお会いしたのは、昨年1月に伊万里市であった『地方自治を学びあう会・いまり』。
この『地方自治を学びあう会・いまり』は、以前より色んな事を教えて頂いている伊万里市議会の盛泰子議員や岩崎義弥議員が行われている勉強会。せっかくの機会なので、伊万里だけでなく、他自治体議員なども参加OKという太っ腹の企画で、何度かお邪魔しているのだが、昨年1月の勉強会で講師を務められたのが林晴信議員だった。

 

林議員には、それ以来、九州エリアの地方議員が主なメンバーの「輝け議会‼ 対話による地方議会改革フォーラム」のオンライン勉強会やこのFacebookなどで色んな気づきを頂いている。

 

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2021年1月30日 オンラインフォーラム「いま踏み出そう地方議会のニューノーマル
輝け! 議会 対話による地方議会活性化フォーラム主催 中段左が林議員

 

そして、今回は、北海道鷹栖町議会の視察だ。
2月に別海町議会のオンライン視察に参加したという添田町議会の久保田町議のFacebookでの記事を見て、「それいい!」と思っていたところに、その第2弾として、「鷹栖町議会のオンライン視察やります!」という林議員の呼びかけに飛びつき、参加させて頂いた。

 

今回の視察、鷹栖町議会側からは、木下忠行議長、青野敏議会運営委員長、片山兵衛議会広報広聴常任委員長にご説明頂き、さらにファシリテーターとして、龍谷大学から法政大学へ移籍されたばかりの土山希美枝教授が登場されるという豪華版。

 

参加した議員側も、北は北海道から九州まで11人。そして早稲田大学マニフェスト研究所とローカル・マニフェスト推進連盟から各1名というメンバーでの視察は、刺激に満ちたモノだった。

 

では、鷹栖町議会の取り組みを見ていこう。


注目点その1 中吊り広告風定例会案内チラシ
何と言っても、最初にアップした電車の中吊り広告のような一般質問の周知チラシ!

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鷹栖町議会中吊り広告風チラシ 2020年9月定例会

 

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鷹栖町議会中吊り広告風チラシ 2019年12月定例会


議会を知って頂くには、一番面白い一般質問からとはどこの議会でも考えるのだろうが、ここまで突っ込んだチラシを作っているところはないだろう。

 

最初に書いたような、思わず読みたくなるようなキャッチコピーや週刊誌の中吊り広告風のデザインが目を引くが、よく見るとちゃんと問い合わせ先の議会事務局の電話番号や開催日も上手くデザインに折り込まれている。

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鷹栖町議会中吊り広告風チラシ裏面 2020年9月定例会

そして裏面には、上の写真のように日程や誰が何を聞くのか、そして入退場が自由であること、資料がちゃんと用意されていること、コロナ対策がされていること、アンケートがあることなどが上手く、まとめてある。

これらの成果だろう。普段傍聴に来られない方がチラシを手に持ってこられた。傍聴者の数も15人前後が30人以上にと倍以上増えたそうだ。

 

何とこれをつくったのは、広報委員長の片山兵衛議員。そう、「しつこいぞ片山!」の当人でなのだ。ブログなどを見ると商工会青年部の時にこのような広告のパロディをつくったことがあったので割とスムーズにできたとあるが、議員でここまで作れるなんて・・・

 

そのあたりはコチラ

hyoue.hateblo.jp


といっても、最初からこんなチラシだったわけではない。以前のチラシはこんな安全運転。

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鷹栖町議会チラシ 2019年6月議会 (両面並べています)

このチラシがあれだけ進化しているのだ。
といっても、デザインだけが凄いのではない。

 

なんといっても、議会でこのようなチラシにGOサインがでたのが凄い!

 

そんな声は私だけでは無く、参加した議員の全員が思ったのではないだろうか。
今回の視察で、最初に質問が出たのがこの点。

 

「普通、こんなチラシを作っても99.98%揉める!。どうやって合意したのか」
という問いかけに関して、鷹栖町議会の木下議長は
鷹栖町の規模だからできたかも。また3期連続無投票という事が議員全員に強くあり、どうやって議会に興味を持ってもらうかを考え、今回の中吊り広告の取り組みも凄く良い評価を頂いた。やりすぎじゃないかとか、そこまでしなくてもいいのではと言った声もあったが、その批判の声は読んでいただいた証しだ。
議会に興味を持って頂きたいという12人の議員の共通認識があったからできた。」
とお話しされた。

 

さらに、議運の青野委員長も、
「多くの町民の方々や土山先生からも他の議会ではおそらく許してくれないよねと言われたが、12人の議員それぞれが議会改革、議会のことをどう知って頂くかを一つの認識を持って協力してくれたという事だろう。
議長も言われたように町民からはふざけすぎではというお叱りの声もあったが、ただ、本当の意味で議会に興味を持って頂けたと思う。それが町民の意識を掴んだという事ではないか。
これからもいろんな批判があるだろう。
しかし、一度やったことはやめられないから、この後どういう風に続けるか、そのことをますます勉強していかなきゃならないなというふうに思っている。」
と述べられた。

 

アイディアを出した広報委員長の片山議員、そしてそれを受け止めた木下議長、青野議運委員長、更に共通認識として合意をした全議員の共通認識の賜物と言えるだろう。

 

 

注目点その2 少年○ャンプ?のような議会周知チラシ
『質問王に俺はなる!』『予算審査を審査しよう!良い質問をした議員にはごほうびシールを!』

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2021年3月定例会案内チラシ

これは、先に紹介した中吊り広告の進化版とでも言おうか、今度は、なんと少年○ャンプ?の表紙の様なチラシに!
『質問王に俺はなる!』という言葉も目を引くが、左下のごほうびシール。これは別に紹介するが、いやいや、さすがである。

 

 

注目点その3 議員を評価! 議員の通信簿&ごほうびシール

せっかく議会に来て頂くんだから、さらに興味を持って頂こうという取り組みとして、一般質問を傍聴者に採点して頂く「議員の通信簿」と言う取り組みを行っている。

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議員通信簿

傍聴に来られた町民の方に上の様な質問の要約(左側)と通信簿(右側)の紙を配布し、質問の後に通信簿部分を切り取って投函して頂くそうだ。

 

下はその説明文

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通信簿説明

そして、その結果は、レーダーチャートにまとめて議会報(下の写真参照)に掲載される。単に聴くだけではなく、書きやすく工夫した通信簿にちょっと一言書く。
その一言欄も、うまく使ってあり、書いた方にとってはちょっと嬉しい、議会が身近に感じられるしかけとなっている。

 

議員にとっても、励みとなる他、もっとよくするためにと同僚議員と協議するなどの機会が増えたという嬉しい副産物もあるそうだ。
なお、現在は全員参加ではなく、私は通信簿はやらないと言う方もおられるが、実施そのものには反対と言うことではない。やれるところからやろうという柔らかさがここでも出ている。

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議会報通信簿掲載分

 

さらに上の表紙の中でも紹介したが、予算特別委員会には「ごほうびシール」なる取り組みがある。これは、予算特別委員会は事前に通告がないことから通信簿が難しいことから、ごほうびシールとしてニコちゃんシールを貼るカタチとしたそうだ。
こちらは、ゲーム感覚で貼れることもあり、通信簿より更にハードルが低く、よく考えられているなぁと感心しきりである。

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鷹栖町議会ごほうびシール


「この通信簿やご褒美シール、客観性がないという指摘もあるが、まあ、選挙そのものが客観的ではないので、主観が入っていても仕方が無いと思っている。特定の支持者を連れてくるのもそれは議員の力。それで傍聴者が増えるのならそれもありではないか」
 とは片山広報委員長の言葉。その通りだと私も思う。

 

 

注目点その4 ジャポニカ学習帳のような「議会傍聴ガイドブック」

 

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鷹栖町議会傍聴ガイドブック


こちらは、議会をもっと身近に感じて欲しいと言うことで、作成されたガイドブック。例に漏れず、こちらのガイドブックも普通に作るのではなく、ジャポニカ学習帳のような体裁である。写真左下部分にあるようにショウワノートの許可も取ってあるとのことだ。A5判、24ページの力作である。下の関西発柔らかニュースサイトの「まいどなニュース」にその経緯などが詳しくあるのでよければ読んで欲しい。

 

maidonanews.jp

 


注目点その5 「一般質問その後を追跡」・

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一般質問その後の追跡 2020年9月発行 表面

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一般質問その後の追跡 2020年9月発行 裏面

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一般質問その後の追跡 2020年9月発行 表面

 

 

一般質問した方もそれぞれ多くおられるが、その中でどれを題材にしようか、どういう形の発行にしようかということが一番問題だったが、まずは各議員にご一任頂き、スタートしたそうだ。

また、
「当初は、全戸配布するとなれば印刷や構成も含めて色んな費用がかかるが、議員の協力でそれぞれ自前で出しましょうと公費を使わずに、ワリカンで発行した。
議員で原稿を作って、印刷だけを印刷会社にお願いをして全戸配布をして、おそらく12,3万ぐらいかかった。
(今は、議会報の一環として作成されており、議員の負担だけでなく公費も入っている)
これを見て傍聴に来られた方も多くおられたから、ある意味手にとっていただいたと理解している。また継続して質問する議員もでてきており、「しつこいぞ片山!」というようなこととなっている。」
と最後は笑いながら、青野議運委員長に説明頂いた。

 

誰を取り上げるか、どれだけのスペースを使うか、議会で揉めそうな点であるが、それを一任でスタートした鷹栖町議会。住民目線とは「言うが易し、行うが難し」であるが、きちんと実行されている証拠であろう。


他にも、委員会を代表しての質問など、注目点が多くあった今回の視察だったが、やっぱり最後に改めて感じたのは、その前向きな姿勢。

 

「3期連続無投票だったので」と何度か議長は口にされたが、それでもまとまらないのが議会でもある。
そのあたりについて木下議長は次のように言われた。

「完璧な内容でできているとは思っていない。
工夫の余地があると思うが、まずやってみようという意志がある。
多くの議会では、ある程度かちっとしたカタチができ、全議員に理解できるカタチにならないと口にできない状況があるのでは無いか。
うちではまずやってみて、評価して頂き、改善されれば良いのではと考えている。
まずやってみようということに挑戦するアクションを起こすことはできるのではないか。
不完全でもやろうとすることだ。
悪い評価されるということは、見て頂けている証拠。
その悪い評価を大切にして改善すべきだと言う意識で取り組んでいる。」

また、片山広報委員長は
「はじめて中吊り広告風案内チラシを作ろうとしたとき、他の議員に相談する前に完成形を近いものを作って、これやりたいのですがと相談した。口で言うだけでなくカタチにする方が分かりやすい。」とも。議長の話と重なっている。

 

このような前向きな姿勢を持った議長と議運委員長と広報委員長。そしてそのチャレンジを受け止める他の議員の懐の深さ。更に具体的なアクション。それらが相俟って、鷹栖町議会の前のめりにも思えるようなチャレンジを生み出している。まさに「チーム議会」の取り組みだ。

 

それに加えて、通信簿やニコちゃんシールのようなハードルの低い、気楽に参加できる仕組みが、住民を議会に引きつけているのだと感じた。

 

スモールステップ。小さな事からコツコツとではないが、小さな成功体験の積み重ねが、次の大きなステップに繋がる。そんなことを感じながら、これをどう、我が飯塚市議会に持ち込もうかなと考えさせられる視察であった。

 

また、最後の御礼を述べる際にも言ったのだが、「住民参加はどうなっている? 住民の声を聞いたか?」と議員は議会で言うが、言う方の議会はけっこう閉ざされている。対して、行政は色んなカタチで住民参加を行っている。(十分とは言わないけれど。)

 

議会としての住民参加をどう考えるか、改めて考えなくてはならない。そして、考えるだけでなく、行動しなければならない。それが、今回のオンライン視察のお約束。

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視察写真


呼びかけて頂いた林議員、ファシリテーターの土山先生、ご一緒させて頂いた各地の議員や民間の方々、そして何より視察を受け入れて頂いた北海道鷹栖町議会の木下忠行議長、青野敏議会運営委員長、片山兵衛議会広報広聴常任委員長に心より感謝申し上げ、視察報告とさせて頂く。


議会関係者の方々は、ぜひ鷹栖町議会のページや片山広報委員長のブログなどをお読み頂き、地域の議会でもチャレンジをはじめて頂きたい。

鷹栖町議会  片山兵衛議員ブログ