飯塚市議会議員「えぐち徹」のつれづれ日記

飯塚市議会議員えぐち徹の足跡です。

建て替え費用を稼ぐのに200年?やっぱりレース場のメインスタンド建て替えはやめよう。

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飯塚オート


私の一般質問、15日に終了しました。

やっぱり、オートレース場のメインスタンドの建て替えはすべきでないというのが改めての私の結論です。

 

一言で言うと、36億円を使ってメインスタンドを建て替えても、それに見合った利益が取れないんです。
何のためのレースなのかというと、市の財政を支えるため。

それが成り立たないのなら、方針転換をすべきというのが私の結論です。

 

以降、質問の際に使った資料などを交えながら、説明しますね。

 

まずは、オートレースの基礎知識です。
まず、なんのためにオートレースをするのでしょう?
一般質問での答弁によると、その目的は、小型自動車等機械工業の改良・振興・合理化
、体育事業・その他公益事業の振興、地方財政の健全化だそうです。

これは法律に書いてある文言で、建前はその通りですが、実際は、最後の地方財政のためというのが、一番の目的ですね。

 

飯塚市の財政のためにスタートしたオートレースは、昭和32年度の開設以来、平成9年度までの41年間、総額587億4600万円を市の財布へ繰り入れを行い、財源確保に貢献して頂きました。
ここ、ホント感謝です。僕らのでた小学校中学校が木造から建て替えられたのはオートレースのおかげといっても良いでしょう。

 

しかし、そのオートレースも、レジャーの多様化などから、入場者・売り上げともに下降をたどり、赤字に。累積赤字も18億円になりました。その後、平成27年度から、包括的民営委託と言って、運営を民間企業に任せて、なんとか黒字に転換して今に至ります。

 

以降の黒字の金額と累積赤字の額は、次の通りです。()内が累積赤字額

平成27年度    1億8千万円(△16億1千万円)

平成28年度      4千万円(△15億7千万円)

平成29年度       1億円(△14億6千万円)

平成30年度      7千万円(△13億9千万円)

令和元年度       7千万円(△13億1千万円)

令和2年度(見込) 2億9千万円(△10億3千万円)

 

そんな飯塚オートも、昭和42年に現在のレース場に移転して、55年近くとなり、老朽化、そして耐震も問題となりました。ちょっと施設を見てみましょう。

 

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飯塚オート

今回建て替えるメインスタンドは、中央の部分です。

 

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右がメインスタンド、奥に見えるのは第2スタンド


場内からの写真がコチラ。メインスタンドの上に、特別観覧席や本部などがあります。

 このメインスタンドが老朽化したことと耐震診断で問題があったことなどから、建て替えてちょっとコンパクトな施設にしたいと言うのが、市の方針。
今年度の予算に36億円とでてきました。

 

これに対し、民間委託したことで黒字になったのは喜ばしいけど、まだまだ累積赤字が残っており、それを返している最中であること、ここ5年間の黒字も平均1億円弱で、36億円を稼ぐには40年近くかかってしまうことから、慎重にすべきというのが、3月議会での私の指摘でした。

 

で、今回は,それを更に深掘り。すると、とてもすべきでないという点が一杯見えてきました。

 

まずは、施設の面から。今回はメインスタンドの建て替え予算が上がっていますが、他にも第2スタンドや選手宿舎もメインスタンドとほぼ同じ年齢です。ということは、こちらも改修や建替が必要になると言う事です。

 

しかし、どちらもその費用について試算はなされていません。じゃあ、他のレース場での事例は?と聞くと、川口オートが選手宿舎を他の施設を合わせて複合化して建て替えた事例があります。なんと約100億だそうです。

 

このように、今後予想される費用が出されていません。

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ですね。

 

 次に、売上の動向です。 
何か欲しいものを買う時に、アマゾンや楽天などをご利用される方も多いことと思います。
レースの売上も大きく変わってきており、今ではネットでの売上がメインになりました。
CMでもおなじみ、オッズパークなどですね。

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オッズパーク

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チャリ・LOTO

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ギャンブー

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ウィンチケット



実際の数字を見てみましょう。

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レース売上・利用者推移

 これでわかるのは、まさにその売上構造の変化です。

2016年の137億円から、2017年は140億円、2018年144億円、2019年154億と順調に伸びてきていましたが、コロナでの巣ごもり生活の影響からか、2020年度は、208億円とぐんと伸びます。

 

この売上が伸びた一番の要因は民間ポータルの伸び。
昨年度2020年度の数字でいうと、全体で207億円の売上があるのですが、一番売上が大きいのは、オッズパークやチャリ・LOTO、ギャンブー、ウインチケットなどの民間ポータル!
民間ポータルの5年前の売上は28億円と全体の20%と、場間場外(他のオートレース場での売上です)の42億円、オフィシャル(オートレース公式サイトでの売上です)の38億円に続く程度にすぎなかったのですが、これが、うなぎ登り!

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売上推移

 

上のグラフで灰色の民間ポータルは、36億円、46億円、69億円とぐんぐん伸びで、昨年度は、136億円、65.7%と、おおよそ全体の3分の2を占めるまでに伸びています。

 

対して、オートレース場での売上は、コロナの影響もあり、2020年は6.6億円とわずか、3.2%。2016年の13%から10ポイント減。2019年からみても半減してしまいます。

 

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売上割合

これに呼応するかのように、利用者数も大きく変化。オートレース場の入場者も20万人が7万人まで激減しています。


これを頭に入れた上で、オートレースの売上がどう使われるかを見てみましょう。

今回の質問での答弁によると、100円の売上があったとすると、70円の配当を引いた30円が収益。その内訳は、選手賞金が5円、人件費が0.3円、開催に係る経費が19.9円、JKA交付金が2円、残りの2.8円が純利益だそうです。

 

この数字からすると、2020年度で、オートレース場での売上から得られた利益は、約1800万円。(売上6.6億円×2.8%)

メインスタンドの建て替え費用36億円を稼ぐには何年かかりますか?との問いかけに、
市は、200年と答弁しています。


他にも試算の方法がありますので、先ほどの売上からの試算を含め3パターンを作って、紹介しました。それが次の表です。

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スタンド収益試算

一番下の本場開催経費より試算というのが、先ほどの分です。
一番上の包括外部委託より試算というのは、民間委託先から入ってくる収益を、売上の比率で割ったもの。

真ん中の単年度収支より試算というのは、市の予算書にある実際の利益を、売上の比率で割ったものです。

 

どれを見ても、惨憺たる状況。一番良い数字でも約87年かかります。
言い換えると、飲食店をやってて古くなったから建替をしようと見積もりとったら、200年分の利益に相当するだけの見積もりが出てきたようなモノです。
そう考えると、やっていいかどうかは、わかりますよね。
もちろん、普通の民間企業だったら、あり得ません。

 

そして、これはあくまでメインスタンドだけの建て替え費用を飯塚オートレース場からの利益と比較したものです。
最初に書いたように、第2スタンドや選手宿舎も請求書を持って追いかけてきます。

 

もう一度基本に返ると、オートレースをするのは、飯塚市の財政を支えるため。
これが崩れてしまうメインスタンドの建て替えはあり得ません。

 

じゃあ、どうする?と考えた時に出て来るのが耐震改修したら?ということ。
この点、市はちゃんと調査しています。

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耐震補強概算

これ情報公開請求してもらったヤツです。
なんと、1億4千万円で耐震補強ができます。
この金額だったら昨年度の黒字の半分程度。

まずは、耐震改修をはじめとするホントに必要最低限だけの補修をやりながら、まずは累積赤字を一掃して、市財政へお金を繰り入れる状況まで持って行く。その上で、黒字の一部を施設改修のための基金に積み立てて、それがある程度の金額となってからやっと大規模な改修を考えてはどうでしょう。

 

これ、私のオススメです。

 

一般家庭でも企業でもそうやってきています。

 

もう「お役所仕事」をやめましょう。

当たり前の仕事を,誰から見てもそうだよねと言われる仕事を、さすが「民のに立つ」と言われるような仕事をしましょう。

 

 

最後に、ウルトラCじゃあないですが、レースを辞めるという選択肢もあります。
もし、レースを辞めて、工業団地にして売ったらどうなるか?
住宅地にして売ったらどうなるか?
下の表は、市が工業団地として売却した事例や、鯰田の地価を参考に試算したものです。

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土地売却試算表

もし、このように土地を売った場合、土地の売却金額に加え、固定資産税が入るだけでなく、工業団地の場合は新規雇用も見込めるでしょうし、住宅地の場合は家具や電化製品などの波及効果もあるでしょう。

 

レース場が、ずっとお金を産まないのであれば、これらも現実的な選択肢となってきます。

 

まずは、36億円のメインスタンドの建て替えとそれに関する準備を一旦ストップして、飯塚市として何が一番いいのか、しっかり見直すべきと私は考えます。

 

 

みなさんは、いかがお考えですか?