9月議会の注目議案だった「議案88号 契約の締結(立岩交流センター建設工事)」
この議案は、市役所斜め前にある立岩交流センター(旧立岩公民館)をチョット離れた一中側に建設し移転するための建設工事を3億5424万円で市外業者である鉄建建設と契約するという議案です。
この工事については、当初市内業者に総合評価方式で発注したいとして公募がありましたが、市内業者は総合評価方式に反対として誰も応募しなかったのに対し、市側が総合評価方式でやることを重要視し、市外業者を対象に公募、その結果、落札率99.04%で、鉄建建設九州支店が落札しました。
議案として提案される前から揉めることが予想されていたこの議案、本会議最終日の採決では賛成多数で可決となりましたが、私は、反対しました。
ただ、当初、反対討論をする予定でしたが、チョットした事情があり断念。
反対討論の原稿書きを最終日の朝方までやっていましたので、せっかくなので、ここで紹介します。
ちょっと長いですが、お時間許しましたらご一読下さい。
議案88号 契約の締結 立岩交流センター建設工事について、反対の立場から討論を行います。
今回提案の立岩交流センター建設工事は、試行とは言え、総合評価方式を導入し、市外業者へ3億5424万円で発注するものです。
反対の理由は大きく2点。市外業者への発注であることと、総合評価方式での発注であることです。
まず、第1点目の市外業者への発注について述べます。
市の公共工事の発注の原則は、市内業者で出来ることは市内で。という市内業者優先、であります。
なぜ、市内業者優先なのか、9月12日の本会議で「地場産業の育成は、何でそんなに重要なのかという私の質問に対し、経済部長は、「地域での雇用の確保、所得向上によります定住化の促進、また、それに伴います税収の増加、こういったものにより本市の財政基盤が安定化され、このことによって多様な行政サービスが提供可能となることによりまして、さらに市民生活の安心、安全をもたらし、ひいては持続的な活力ある地域の発展に資するものであると考えております。このようなことから、地場産業の育成といったものは、地域活性化の重要項目であるというふうに考えておるところでございます。」と答えられています。
また、飯塚市中小企業振興基本条例では、市の責務を定めた第5条の第3項に次のように定めています。
「市は、工事の発注並びに物品及び役務の調達等を行うに当たっては、予算の適正な執行、透明かつ公正な競争及び契約の適正な履行を確保しつつ、中小企業者等の受注機会の増大に努めるものとする。」
つまり、工事の発注したり、なにか買ったり、委託を出したりする際には、市内の中小企業に出来るだけ発注しますよとの,市内業者優先の原則を条例で定めているのです。
今回の議案は、市内業者で十分対応可能な案件である立岩交流センターの建設工事を市外業者へ発注するものであり、その大原則である市内業者で出来ることは市内業者へ発注するという市内業者優先の原則に反しています。
市は、今回の市外への発注は、市内業者が6月22日公告の工事発注に参加参加しなかったから、地元との協議を守るためにやむを得ないと言いますが、市内業者優先というのも、市内業者だけでなく、市民との約束であります。
次に総合評価方式について述べます。
市側は、総合評価方式を導入すると、価格と品質が総合的にすぐれた調達が行え、優良な社会資本整備が可能となり、技術的能力の向上に伴う建設業者の育成や、談合の防止、新規事業者の適切な評価の実施等が行えると言い、立岩交流センター建設工事を最初の事例として選びました。
しかし、そのメリットは本当なのでしょうか。
まず、価格についてですが、価格のみで競争する今までの入札と比べ、総合評価方式は、価格だけではなく、その他の要素が入ってくることから、当然のことながら、価格のみの競争である今までの入札と比べ、価格面で高くなることは容易に想像がつきます。
先の一般質問の際にも紹介しましたが、全国市民オンブズマン連絡会議が9月の会議で発表した資料「いまどきの入札、いまどきの談合」によると、県庁所在地、中核市における平均落札率は、総合評価方式の92.6%に対して、一般的な入札方式は88.6%と4ポイントの差があります。総合評価方式を採用することで、工事の価格、つまり市民の皆様の税金が多く支出されるかもしれないのです。
今回の立岩交流センターの議案の落札率は99%です。
ところが、今年度の1億円以上の建設工事の発注状況を見ると委員会の報告されたものは全て89.9%。
もし、今回の立岩交流センター建設工事が通常の入札による発注で行われ、89.9%で落札されたら、今回の議案と比べて、3500万もの税金が節約されていたのかもしれません。また、市内業者の受注であることから市税も当然増えることでしょう。
次に品質について述べます。
1月31日の総務委員会で、「今まで品質に問題があったり、地元業者の育成に失敗したりしたので、総合評価方式を導入するのか」と言う質問に対し、「今まで特に問題があったわけではなく、さらなる品質の確保とか、業者の育成を目的として、今回の制度改正を行う」と述べられています。
つまり、現在において、公共事業の品質については、問題ない訳であります。
また、さらなる品質向上を目的とするなら、工事の成績評定について、数年後の建物の状況などを加味するなどをすべきであります。
また、今回の議案の立岩交流センター建設工事の評価基準を見ても、技術士や1級の施工管理技術士等が何人いるか、若年技術者の採用状況がどうか、また類似の工事の施工実績はどうか、配置予定技術者の資格の保有年数は何年か、といった基準となっており、品質と言うより、企業の体力に重きを置いた基準となっているのではないかという指摘があります。
このような基準では、市が総合評価方式のメリットとした新規事業者の適切な評価は、困難ではないでしょうか。
日弁連、日本弁護士連合会の2010年入札制度改革に関するアンケート調査報告書によると
「総合評価方式について」
手続が煩雑であることによる所要時間(期間)の増加,事務的負担の増加を指摘する自治体が多かったこと。また,費用・経費の増加や、評価の客観性・統一性を確保することの困難などを指摘する自治体があった他,工事実績主体の技術評価では,受注企業が偏るおそれがあると言う指摘や、評価期間中は技術者を他の現場へ配置できない(広島市)等の指摘があっています。
また、市は、透明性の確保も制度改正の理由としていましたが、これもいかがでしょうか。
オンブズの資料「いまどきの入札、いまどきの談合」では、
「総合評価方式では、従来の価格だけを落札の根拠とする制度と比べ、業者選定の理由に関する透明性が低い。こうした不透明さは市民が談合を追及することを困難にするだけでなく、評価基準などの秘匿されるべき情報が利権となり、これが官製談合の温床ともなる。」と指摘し、「入札制度の改革は、総合評価方式の採用自体を見直すことから考え直すべきだ。」と述べています。
総合評価方式は、発注者側であり市にとっても、受注者側である業者にとっても、時間と手間、つまりお金がかかります。
今回の落札率が99%であることでわかるように、公共事業の価格が安くなるわけではなく、高くなるおそれがあります。
品質優先と言うより、企業の体力勝負となり、受注企業が偏るおそれもあります。
発注に際してこのような疑問の多い、業者からも反対の多い総合評価方式を性急に導入することは、市内業者との信頼関係も壊しかねません。
全ての公共工事について総合評価方式を否定するものではありませんが、その導入に際しては、十二分に慎重な検討と、業者側との十二分な協議、入札制度を特別付託案件として審議している市議会の総務委員会での合意を前提に行うべきです。
以上、市外業者への発注であることと、総合評価方式での発注であること、この2点を大きな理由として、本議案に反対とさせて頂きます。
最後までお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m
まだ、言い足りないくらいなんで、それはまた別の機会に。
ご意見を頂けましたら幸いです。