飯塚市議会議員「えぐち徹」のつれづれ日記

飯塚市議会議員えぐち徹の足跡です。

病院建て替えの予算に関しての討論。

金曜日の12月議会本会議最終日で、病院建て替えの予算に関して行った討論の原稿をそのまま載せます。ちょっとくどいと思われるかも知れませんが、それだけ言わんと議員に伝わらないのではと思って、あえて挑発的にくどいくらいの討論としました。

ただ、伝えたかったのは、「ホントに40億の病院建てちゃって大丈夫ですか?ちゃんと確認しましょう。」ってこと。

さて、あなたはどう考えますか?

議案第102号 平成24年度飯塚市立病院事業会計補正予算第1号について、討論をいたします。
この補正予算は、40億6195万2千円の継続費を設定することによって飯塚市立病院の建て替えのための予算を確保するものであります。

まず、この建て替えの必要性について述べます。
この建て替えに当たり決定された、飯塚市立病院建替事業整備計画の冒頭には次のようにあります。
飯塚市立病院建替事業整備計画
1 はじめに
飯塚市立病院は、福岡県中央部の飯塚市西部に位置する平成20年4月に開設された病院です。昭和35年2月に開設された筑豊労災病院の廃止に伴い、飯塚市がその「後医療」を確保する目的で独立行政法人労働者健康福祉機構から建物・医療機器等の譲渡を受け、その管理運営は公益社団法人地域医療振興協会が担っています。
飯塚市立病院は、入院では急性疾患に対する診断・治療を中心に、外来では慢性疾患に対するフォローアップ・リハビリテーション・外来化学療法に力点を置いて診療にあたっており、地域の中核病院として地域社会に貢献しています。また、県内外の医療過疎地への診療支援として九州各地のへき地診療所等への代診医派遣を行っています。
しかしながら、飯塚市立病院の西病棟は昭和34年の建築からすでに50年、東病棟も築後26年が経過しており、老朽化の程度には2つの病棟間で差があるもののどちらの病棟も病床面積は不十分であり、入院患者のアメニティ確保もむずかしい状況です。また、中央棟、検査・レントゲン棟等も築後50年が経過しており、今後も飯塚市立病院が積極的に充実させるべき分野である救急医療、内視鏡、外来化学療法等の部門については、狭隘な診療空間しか確保できず、医療技術の進歩に外来の建物構造が追いついていません。
このため、急速に進歩していく医療技術、多様化していく個人のニーズに対応すべく新たに病棟及び診療部門を建替整備することにより、病院機能の強化を目指すものです。

この建て替えの必要性については、私も全く同意するものであります。

しかしながら、この計画と今回の予算に当たり提出された資料ならびに委員会での質疑を考えると多くの疑問が解決されないままであり、その状況の中で、この補正予算に賛成することは出来ないと言わざるを得ません。以下、その疑問点を数点指摘します。

まず、第一に、先ほど紹介した飯塚市立病院建替事業整備計画では、事業費について約30億円とされています。しかし、今回の予算は、先に述べたように40億6千万円であり、整備計画と比較すると10億6千万円増、35%も超過した整備計画から大きく外れた補正予算となっています。当然のことながら、今回の設計業務は30億円の事業費という枠の中で行われるべきものであり、40億円にものぼる設計業務は、私たち議会、市民に対する市の約束違反であります。

また、マイホームの購入は年収の4倍から5倍程度までとよく言われます。同様に病院の建設は1年間の医業収入程度までと言われるそうです。
平成20年度の開院から昨年23年度までの4年間の決算における医業収入を平均しますと、30億5681万円となり、当初の30億円という事業費については妥当とも思えますが、今回の補正予算は、それを10億以上上回るものであり、採算性に疑問を持たざるを得ません。
また、設計業者の選定を考えても、応募された設計業者の皆様は30億円という事業費の中で提案されており、この点からも疑問が浮かんできます。

次に、病院を建て替えに際し、運営側の地域医療振興協会から、肝心の今後の病院運営に関する事業計画が出されていません。
当然のことながら、市は、指定管理者として地域医療振興協会に運営を任せているとはいえ、市立病院である以上、その運営について地域医療振興協会と共に責任を持たなくてはなりません。
その運営責任を果たすために、市は病院の建て替えを検討し実行しようとしているのでしょうが、その基本となる事業計画さえ、市に提出されていない中、その運営責任を果たせるのでしょうか。運営側の地域医療振興協会側から、新病院が建った後、このような医師・看護師等の体制でこのようなことに留意しながらどういう風に病院経営を行うのか、事業計画が出されない中での病院建て替えはあり得ないことであります。
また、市は地域医療振興協会が医師を集めることができるということを大きな理由として、公募によらず指定管理者に選定しました。しかしながら現状はどうでしょうか。いまだに約束されていたはずの32名の常勤医師は確保されていません。
先の委員会でも確認しましたが、地域医療振興協会が自前で確保した医師は1名のみであります。
市は、地域医療振興協会側から出された事業計画を充分チェックして、その事業計画が市立病院の提供すべき地域医療が満足されているかどうか確かめる責任があります。しかし、その事業計画が出されていない中、市はそれを、どうして確かめることが出来るのでしょうか。
それとも、今回の病院の建て替えは、地域医療振興協会側の意向による建て替えではなく、市の意向による建て替えなのでしょうか。

3点目。今回の病院建て替えを行うのは、あくまで飯塚市であり、市が資金調達も行います。市が一貫して説明してきたのは、その資金調達はにおいて、病院事業債等を利用した場合、市の負担となる部分については、運営する地域医療振興協会に負担させますと言うことでした。
簡単に言うと、市が、お金を立て替えて建てるから、後で払ってね。ただ国から交付税相当分として来る分については払わないで良いよと言うことです。
ただ、このやり方は、市においてもリスクが生じます。市としても大きな投資であります。
また、その資金調達においては、市も病院事業債、合併特例債の発行を予定しており、その返済がきちんとなされるのかは、充分なチェックが必要であります。
この建て替えを行い大きな借金を背負うことになる地域医療振興協会がちゃんとその借金を払っていけるのでしょうか。
実績をお示ししますと、開院直後の平成20年度と翌21年度は、飯塚市からの交付税相当分の補助を含めても、1億5千万円、1億7千万円の赤字でした。そして、22年と23年度は、この繰り入れを含めると、黒字転換したものの、1億3千万円、6千万円の黒字となっています。

他方で、今回、40億円の工事をして、他に6億5千万円の医療機械を買ったりして、支払っていくことになる金額は、市の提出した資料でも毎年1億7千万円近くにのぼります。

整理すると、平成22年、23年の黒字は、それぞれ1億3千万円、6千万円。これが病院が新しくなるだけで、1億7千万円を超えるのでしょうか。

もし、赤字が出続けるとどうなるでしょう。毎年多くの借金を出す施設を、指定管理者の地域医療振興協会が運営を続けてくれるのでしょうか。

「約束だから続けてくれるよ。」と市は言いますが、果たしてそうでしょうか。この病院の赤字を補填するために他の病院の黒字からお金を回してくれるのでしょうか。
他の病院はそんなに経営状態がよいのでしょうか。他の病院で資金需要はないのでしょうか。

そんなことはありません。地域医療振興協会の今年度の事業計画書によると、公立丹南病院、市立伊東病院、市立恵那病院、市立奈良病院、市立大村市民病院、上野原市立病院、上河津診療所、の7つの病院、診療所で新病院建設に関する記載があります。
また、市が10月に厚生委員会へ提出した資料では、公益事業負担金を納付している団体、つまり黒字と思える団体は、約50団体のうち、25団体であります。
黒字だからと言っても今後の施設や設備の更新のために積み立ても必要です。赤字だったら振興協会側から赤字を補填しなくてはなりません。
また、地域医療振興協会が運営する施設は直営が約10施設、経営委託が1施設、その他の約40施設が指定管理者での受託と指定管理者制度による運営が多くを占めます。
その事を考えると、地方交付税の算定が変わることによって、病院の収益も大きく変わる事が予想されるというリスクもあります。
現に平成20年の普通交付税の算定基準はベッド1床あたり48万2千円だったのが、翌平成21年には、59万4千円、平成22年には70万1千円と22万円近くも増額されています。この変更があり、平成22年以降の飯塚市立病院の運営は黒字に転換しています。
もし、この算定基準が、この逆になってしまったら、この地域医療振興協会の経営環境は一気に厳しいものになることが十分予想されます。

そうして、経営が厳しくなったときに、医者や看護師、理学療法士作業療法士、薬剤師、事務職員など市立病院で働く多くのスタッフの給与の削減や、不採算部門の撤退などは、ありえないのでしょうか。また、振興協会が「や〜めた!」と運営から撤退することはないのでしょうか。
辞めたくなくても辞めざるを得ない事態がおきることはないのでしょうか。

そんなことのないように地域振興協会から支払いについての確認書を取っていると市は言いますが、この確認書を税理士の方に見て頂き、ご意見をお聞きしましたら、「無いものは取れないよ。保証人や担保をしっかり取ることが必要」と言われました。払おうにも払えないことさえあるのです。

そのことは、民間会社の社長として経営に携わってきた経営のプロの市長が一番ご存じのはずです。

この保証人については、平成18年度の病院・老人ホーム対策特別委員会でも話題となり、市側も検討することとしていたものでありますが、その保証人は未だにつけられていません。

もし、振興協会が経営難となり,市立病院から撤退とか給与削減などの事態になって困るのは、医者や看護師たちスタッフですし、入院や通院をしている地域の患者さんです。そんなことのないように、市や私たち議会は、この資金計画については、充分なチェックをすべきと考えていますがいかがでしょうか。

他にも、なぜこの病院建て替えが起債を使うにしても病院事業債の100%使用ではなく、25%が合併特例債となっているのか、また、設計の条件となっている整備計画では、外来患者数の設定が1日600人規模(最大750人程度)となっているのに対し、市の示した資金計画では360人となっており、整備計画通りの実施設計ならば過剰な設備とも思われるなど多くの疑問がわいてきます。

この飯塚市立病院は、筑豊労災病院を廃止するという国の方針に対し、地域医療を守るために飯塚市が引き継いだものであり、昨年度の数字では、毎日186人もの入院患者様、367人もの通院の患者様を迎え、医療を提供しており、また300人以上もの医師や看護師をはじめとしたスタッフの方々が働く大切な地域医療の場であり、混乱は許されません。

そのような大切な場だからこそ、ちゃんと考えるべきだと思っています。

繰り返しになりますが、身の丈に合ってないような病院を建ててしまって、後で支払いきれないようになり、患者さんや市立病院で働く方々が困ることがないように、資金の計画がホントに実行できるかどうかをちゃんとチェックしましょう。

この建て替えの予算にOKを出せるのは、その事業計画がちゃんとしているか、しっかりチェックをした後です。もし、資金計画に無理があるのなら、建て替えの計画を見直して、充分支払える規模の病院にすべきであります。
簡単に言うと、40億円の病院が支払いが厳しいようなら、支払える範囲の病院、30億円が大丈夫な上限なら30億円の病院に計画を変更すべきではないでしょうか。

私は、「市立病院は建て替えすべきでない」とか、「市立病院がいらん」とかは、言っていません。公立病院であるから、今まで同様、税金による補助はもちろん継続しなくてはなりません、その上で「支払いできるサイズの建て替えをすべき。まずはその確認をしないとGOサインは出せない」って言っているんです。

ただ、充分なチェックをするにも私は病院経営のプロではありません。市が提出している資料が充分控えめに考えられているものなのか、はたまた行政にありがちな背伸びした資金計画でないのか、直感的には感じる所がありますが、正直わからないのが、ホントのところです。
であるからこそ、その確認をするために、運営側の地域医療振興協会に議会に来ていただき、ご自分達がこの飯塚市立病院をどのように運営していくのか、資金計画やその保証を含めてご説明いただきたい、また他方で、自治体病院経営に関して充分な経験と知識をお持ちのコンサルタントの方などに地域医療振興協会の考えている事業計画を見て頂き、資金計画を含めて妥当かどうかご意見を聞かせて頂き、その上で安心して判断したいのです。そうするべきだと考え、参考人招致を求めましたが委員会では否決されました。

市長はじめ執行部の皆様も私たち議会も病院経営のプロではありません。であるならば、病院経営のプロにご意見をお聞きしましょう。医療で言うセカンドオピニオンが、正しい判断をするためのものであるように、この病院建設においても、経営のプロにご意見をお聞きすべきです。

このようなプロセスを省いて、資金計画が大丈夫かどうか、ちゃんとチェックしないでいいのでしょうか。40億の病院建てて支払いが出来ずに、患者さんや働く方々に迷惑かけるようなことになったら、誰が責任取るのでしょうか。市民からお預かりしている大切なお金を、このような基本的なことを確認せずに使って良いのでしょうか。

「その時、おれはおらんもんね。しらんばい」と言うことは無責任であり、許されません。

市長はじめ行政の皆様と共に私たち議会は、そのチェックを充分すぎるほどすべき立場にあります。

再度、指摘します。
この病院の建て替えは当初の計画は30億でしたが、今回の補正予算は40億6千万円です。
地域医療振興協会側から事業計画は提出されていません。
約束された32名の常勤医師は揃っていません。
支払い能力にあった建物か疑問です。
病院事業債を利用すべきで特例債は利用すべきではありません。
地域医療振興協会サイドの事業計画とこの病院に対する思いを聞いた上で、経営のプロに計画の妥当性等の意見を聞くべきです。

以上のことを考え合わせると、この病院事業会計の補正予算をこの状況のまま、OKすることはかえって市立病院のためにならない、通院、入院している患者様などを含めた市民、そして市立病院で働く皆様のためにならないと私は考えます。

必要な確認ができるまで、私はこの病院事業会計補正予算に賛成できません。

以上を述べまして私の討論とさせて頂きます。